今回お話する悪魔は
ユダヤ人の元神様
ベルゼブブ
です。
悪魔の中でも頭目の1,2を争う有力な悪魔だそうです。
このベルゼブブについて少し深堀していきましょう。
ベルゼブブとは?
ベルゼブブはサタン、ルシファーと並ぶ悪魔の首領と考えられている悪魔。
複数の文献においても2番手とされる実力ある悪魔である。
~ベルゼブブ~
- 英字表記: Beelzebub
- 別名1: ベルゼビュート(Belzebuth)
- 別名2: ベルゼブル(Beelzebul)
- 名前の意味: 蠅の王
- 出典: 旧約聖書、新約聖書、カナン神話
ベルゼビュートはフランス語読み、名前の意味はヘブライ語で「蠅の王」となっている。
「暴食」を体現する悪魔
暴食はキリスト教では悪とされています。
理由には「困っている人を救う」ことに直結していきます。
飢えに苦しんでいる人を助けるのには「食料」が必要だが、その食料を生きるために必要な量以上に食べると「助ける分の食料」も足りなくなる。
その為「暴食は上で苦しんでいる人を救うことを阻む悪魔のような罪」と定義される。
ただ、この暴食の定義も時代と共に変わっており、ベルゼブブが何故暴食と関係があるのかは不明。
後述する蠅の姿に関係性があると考えられる。
お酒を飲みすぎるのも暴食の一つとされているが、飲むこと自体は罪ではない。
イエス・キリストは「ワインを血に変える」といった行いもしており、「酒=悪」ではありません。
他宗教なら駄目でも、キリスト教なら節度を守ればOkです。
蠅の姿を持つ悪魔
ベルゼブブが何故ハエの姿を持つのか?
この悪魔が進んで行う悪事は
- 国の支配者を暴君に変える
- 争いを起こさせる
- 嫉妬心を引き起こす
- 殺人を唆す
- 人間に悪魔崇拝をさせる
- 高位の聖職者を姦淫へと誘う
という、悪魔としては最悪な行為をするが、一見すると「暴食」に直接つながるようなものではない。
それは7つの大罪と悪魔たちを関連付けた悪魔学者ビンスフェルトが関係している。
彼はベルゼブブが残飯や動物の死体に群がる蠅と関係の深い悪魔と見なしたからという説である。
蠅の悪魔として扱われたのは、異教の神への差別的な扱いも関係している。
ただ、蠅の姿が描かれている理由は上の理由とされている。
その為、「地獄の辞典」では蠅の姿で描かれている。
異教の神「バアル=ゼブル」
ベルゼブブは元から悪魔などではなく、「イスラエル周辺で信仰されていた異教の神バアル=ゼブル」であった。
この神は別名「気高き主」、「高き館の主」と呼ばれており、ウガリット神話の最高神であったとも。
だが、ユダヤ教を信仰していたヘブライ人にとってこの神は「自分たちの宗教の信者を盗む悪魔」のようなものであった。
また、ユダヤ人たちはバアル=ゼブルの名前の「気高き館の主」という意味が、ユダヤ人の偉大なる王「ソロモン王」と勘違いされることを嫌った。
そこで、この神の権威を貶めようと考えて名前を変えることにした。
バアル=高き館(王)
ゼブブ(ゼブルと発音が似ている「蠅」という意味)
この2つを組み合わせて、異教の最高神の名前を「蠅の王」という失礼極まりない、無礼な名前に変えたのであった。
旧約聖書でも、「この神を信仰する者には災いが降り注ぐ」と記されており、それだけこのバアル=ゼブルの存在が彼らにとって脅威であったのかが伺える。
昔からハエの王?
前述したとおり、「バアル=ゼブル」は「バアル=ゼブブ」という名前に変えられた。
ただ、これが本当に「権威を貶めるため」、「侮蔑を込めるため」なのか。
理由は「バアル=ゼブル」が信仰されていた地方や、元々蠅が象徴するところが関係している。
蠅の象徴
蠅は死体や腐った肉から自然と蛆が湧き、そこから蠅になる。
このことから、「蠅」は「死から湧き上がる生命力の象徴」と考えられる
また、バアル=ゼブル地方では「霊魂の神」とも信じられていた。
理由は「蠅などの羽虫がカナン人の魂を運ぶ」という地方の言い伝えからである。
このことから「バアル=ゼブル」を「霊魂の神」=「蠅の王(神)」とも呼ばれていた説が存在する。
そのため、「バアル=ゼブル」は元から「蠅の王」であった可能性もあります。
魔女とベルゼブブ
15~17世紀の中世ヨーロッパ。
各地で「魔女狩り」が横行していた暗黒の時代でもあり、「悪魔と契約した魔女」、「悪魔が人間に憑りつく悪魔憑き」など迷信が世を支配していた。
そんな中、ベルゼブブは猛威を振るっていたとされ、「魔女を支配するのはベルゼブブ」とまで言われていたという。
魔女裁判の残されている記録には
- 魔女が踊りながらベルゼブブの名前を口にし、イエスを否定する儀式を行った
- ベルゼブブ本人が魔女たちと乱交を行った
- 数千人もの信徒の眼前で悪魔祓い師がベルゼブブを祓った
といった様々な眉唾物の記録も残っている。
キリスト教徒にとって、ベルゼブブという悪魔がいかに身近に存在し、また恐れられていたのかがよく分かる資料である。
もしモデルとなった異教の神の権威を失墜させることが目的であれば、これ以上にない時代であったのかもしれない。
聖書におけるベルゼブブ
ベルゼブブは聖書において
- マタイによる福音書
- 列王記
に記されています。
列王記では「バアル=ゼブブ」という異教の神として、そしてマタイによる福音書では「ベルゼブル」という悪魔として登場している。
それぞれどういった記され方がされているのか見ていきましょう。
列王記10章18~28:
イエフはすべての民を集めて言った。
「アハブは少ししかバアルに仕えなかったが、このイエフは大いにバアルに仕えるつもりだ。
今バアルのすべての預言者、バアルに仕えるすべての者、すべての祭司をわたしのもとに呼べ。
一人も欠席させてはならない。
わたしがバアルに大いなるいけにえをささげるからだ。
欠席する者はだれも生かしてはおかない。」
イエフはバアルに仕える者を絶やすために、策略を用いたのである。
イエフが、「バアルのために聖なる集まりを催せ」と命じたので、彼らはそれを布告した。
イエフがイスラエル中に使者を遣わすと、バアルに仕える者が皆集まって来た。
来ない者は一人もなかった。
彼らはバアルの神殿に入り、神殿は隅々まで満ちた。
イエフは衣装係に、「バアルに仕えるすべての者に祭服を出してやれ」と言った。
彼らは祭服を出した。そこでイエフはレカブ人ヨナダブと共にバアルの神殿に入り、バアルに仕える者たちに言った。
「主に仕える者があなたたちと一緒にいることがないよう、ただバアルに仕える者だけがいるように、よく調べて見よ。」
二人はいけにえと焼き尽くす献げ物をささげるために入ったが、イエフは外に八十人の人を置き、次のように言った。
「わたしがお前たちの手に渡す者を逃がした者は、自分の命をその逃がした者の命に代えなければならない。」
焼き尽くす献げ物をささげ終わったとき、イエフは近衛兵と侍従たちに言った。
「入って、彼らを討て。一人も外に出すな。」
近衛兵と侍従たちは彼らを剣にかけて殺し、そこに投げ捨て、更にバアルの神殿の奥まで踏み込み、バアルの神殿にある石柱を運び出して焼き捨てた。
バアルの石柱を破壊してから、バアルの神殿を破壊し、これを便所にした。
それは今日に至るまでそうなっている。
このようにして、イエフはイスラエルからバアルを滅ぼし去った。
マタイによる福音書: 12章22節~
ベルゼブル論争
悪霊に取りつかれて目が見えず、口もきけない人がイエスのところに連れてこられた。
イエスがその男性を癒すと、人々はみんな驚いた。
「この人はダビデの子ではないだろうか?」
しかし、ファリサイ派の人々は
「悪霊の頭であるベルゼブルの力を借りなければ、この者は悪霊を追い出すことはできない」
と、言った。
イエスは彼らの考えを見抜いてこう言った。
「どんな国でも内輪で言い争えば荒れ果ててしまい、どんな町でも家でも内輪で争えば成り立って行かない。
サタンがサタンを追い出せば、それは内輪揉めだ。
そんなふうでは、どうしてその国が成り立っていくのか。
私がベルゼブルの力で悪霊を追い出すのなら、あなたたちの仲間は何の力で追い出すのか。
だから、彼ら自身があなたたちを裁くものとなる。
しかし、わたしが神の霊で悪霊を追い出しているのであれば、神の国はあなたたちのところに来ているのだ。
人が犯す罪や冒涜はどんなものでも赦されるが、”霊”に対する冒涜は許されない。
人の子に言い逆らう者は許されるが、聖霊に言い逆らう者はこの世でも後の世でも赦されることがない」
まとめ: 7大悪魔の1柱「ベルゼブブ」
今回は7大悪魔の1柱であるベルゼブルについて紹介させていただきました。
元々は神様であり、その他の宗教が自分たちの宗教の為に悪魔となる。
普通に世界中で見られる現象だったりする。
という訳で今回のまとめ
- ベルゼブブは7大悪魔の1柱
- 「暴食」を体現する
- 元々はイスラエル周辺で信仰されていた神様
- キリスト教では信仰の為に悪魔とされた
- 蠅自体は「生命力の象徴」という話もある
- 魔女を支配するのがベルゼブブと信じられた
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