今回お話するのは
全ての火を象徴する火神
アグニ
です。
火は最古の時代から信じられたり恐れられたりと古い結びつきがありますね。
アグニとは?
アグニはインド神話における火の神様で、妻はスヴァ―ハー。
火に関連する神様とされているが、その範囲は広大。
- 天上においては太陽
- 中空においては稲妻(雷光)
- 地上においては祭火
- 怒りの火、思想の火、霊感の火、森の火、家の火
と、全ての世界に存在するということを示唆している記述もあります。
また、それだけでなく生き物の中にも存在し、
食物の消化作用として存在し、栄養を全身に行き渡らせて健康を維持し、ひいては子孫繁栄や財産の増大
などももたらすといわれています。
その姿は炎を表すかのように描かれており、
- 赤色の体に炎の衣
- 黄金の顎や歯
- 炎の髪の毛
- 2つの顔
- 3枚、もしくは7枚の舌
といった外見を持っている。(舌は捧げられた供物を堪能するためという説がある)
アグニの起源と誕生
アグニの起源とアグニの誕生にはいくつかの説・お話があります。
正確な時期は不明ですが、過去に遡ると6000~9000年前ともいわれている。
- インドヨーロッパ語圏のアーリヤ人の信仰
- インドの先住民の土着信仰
といった説があり、これはどちらの神話にもアグニと似た神話があるためです。
また、アグニの誕生の神話においても、複数の逸話があります。
- ブラフマーが作り出した蓮華から誕生した
- ディヤウスとプリティヴィーの息子
- 太陽や医師から生まれた
- 原人プルシャの口から生まれた
- 造物主プラジャーパティによって、リグ・ヴェーダと共に作られた
と、誕生には様々なお話がありますが、その中で「誕生した直後に両親を食い殺した」という話があります。
これは、「生まれた直後のアグニから発せられた火は、両親よりも勢いを増していき、自身を創った両親を飲み込んだ」と書かれており、「食い殺した」の意味合いは少し変わります。
彼が残酷なのではなく、アグニの能力の偉大さを表しているともいわれている。
ヴェーダ時代のアグニ
ヴェーダにおけるアグニの重要性というのは物凄く高かった。
ヴェーダには「神を讃える賛歌」というのが存在するが、インドラはその「1/4」という膨大な量を占めています。
その次に多いのがアグニであり、200を超えています。(約1/5)
賛歌が多いほど、その神様の重要性というのは高く、インドラとアグニは最も重要視されていたというのが伺える。
この賛歌には
- アグニの属性があらゆる場所に存在している
- アグニの多種多様な性格・性質
など、時代が進むにつれて形質が変化していったアグニの起源ともいえるお話が描かれています。
火の神様としてのアグニ
当然火の神様として信仰されているアグニですが、その力は信仰する人間にとっては特別なものです。
- 祭火の力
- 浄化の力
「祭火の力」は神と人を繋ぐ仲介者たる役目としての力。
「浄化の力」は大地を焼き払い、人が住む場所に変えるという力。(アーリア人の歴史と関わりを持つ)
供物は祭火たるアグニに捧げられて煙となり天に届けられ、神はアグニによって祭場に召喚される
と記載されており、人々にとってアグニがどれだけ重要視されていたのかが伺えます。
アグニがいなければ神から啓示を得ることもできない、居住地を得ることもできない。
アグニという火の神がいるからこそ、人間が地上で繁栄することができたのです。
アグニのちょっとした逸話
火の神様アグニの「浄化の力」に関する逸話があるのを見つけました。
それをちょっとだけ紹介しておきます。
アグニは「神としてあらゆる立場の問いかけに対し誠実に解答しなければならない」という義務を忠実に守っていた。
だが、それが原因で聖仙ブリグを激怒させてしまい、「不浄な食べ物以外を食べることが出来ない」呪いをかけられてしまったのであった。
だが後にブリグは「アグニは忠実に神の誓いを尊守しただけ」ということを知り、呪いを解いた。
その上、「アグニの焔に浄化の力」を与えて、この世の全ての不浄な存在を浄化できるようにした。
このおかげで、アグニは人間からの供物を浄化し、神々の元まで運ぶ仲介者としての役割を担うようになったのであった。
この浄化の力で「シーター」の身の潔白を証明しました。
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