今回お話するのは
インドの焼かれた恋愛神
カーマ
です。
とあるゲームで史実も女性というイメージがありますが、実際は男神です。
【愛の神】カーマとは?
カーマはインド神話における「愛の神」のこと。
- ダルマとシュラッダーの息子
- ブラフマーの息子
という2つの説がある。
サンスクリット語で「カーマ」という単語には
- 肉体的な快楽
- 悦楽
- 官能
- 愛欲
を意味しており、インドで有名な性愛書「カーマ・スートラ」。
この書物にも「カーマ」という単語が入っているが、「愛欲」を意味するカーマを取り扱っていて、神としてのカーマにまつわる話は取り扱われていません。
また、カーマには数多くの別名があり、
マーラ | 仏陀の修行の邪魔をした魔王 |
アナンガ | 身体無き者 |
マナンシジャ | 美しい姿をしたもの |
アサマバーナ | 奇数の矢を持つ者 |
シュリンガーラヨーニ | 愛の根源 |
プシュパダヌス | 矢を弓で飾るもの |
カーマの外見と能力
カーマは美男子であり、乗り物(ヴァ―ハナ)はオウムかインコ。
手は2本であり、4本持ったりしている神様たちと比べれば幾分普通に見える。
- 海獣マカラを旗標
- 蜂蜜が連なった弦が張られたサトウキビでできた弓
- 先端を花で飾った矢を5本
所持しています。
彼とその配下が地上に降りるだけであらゆる生物が愛欲に心を支配され、性行為をしまくってしまう能力を持っています。
最も特質する力はその弓で、矢で射抜かれたものは恋情を引き起こされてしまう。
この力はかなり強大で、聖者や苦行者ですら迷わせてしまうほど。
ヴァーダ時代に誕生した愛の神
インド最古の文献「リグ・ヴェーダ」にも現れていて、
紀元前1200年ごろの「リグ・ヴェーダ」では、
世界のはじまりのとき、暗黒が立ち込め、水に覆われていた。そこに「唯一の存在」が熱の力により誕生した。これにより、最初の生命が世界に生じた。その唯一物から、カーマが現れた。
と、世界が創造された時に唯一物から最初に誕生した原初的な存在として記されています。
また、紀元前1000年ごろに誕生した「呪文の言葉を集めた聖典アタルヴァ・ヴェーダ」では、
- 敵を駆逐する勇ましい神
- 原初の存在
としても描かれていて、今知られている「愛の神」からは少し想像できない神様であったこともうかがえます。
シヴァに焼かれたカーマさん
カーマと言えば破壊神シヴァに焼かれた話があります。
これにはある背景があり、FGOのカーマが若干ひねくれているのも納得できる話です。
~誰の為に矢を射る~
神と悪魔アスラ族の戦いが続いていたある時、アスラ側に不死身のアスラ・ターラカが誕生。
神々はその力に悩まされており、このアスラを倒さなければならなかった。
ただ、このアスラを倒すのは「パールヴァティーとシヴァの神の子、軍神スカンダ」だけであった。
しかしシヴァは妻サティーを失っており、その苦しみから苦行を行っていた。
その苦行故にパールヴァティには一切関心を示さなかった。
「このままではスカンダが生まれることはない」
と危惧した神々はカーマをシヴァの元に派遣。
カーマは持ち前の矢を放ち、シヴァの関心をパールヴァティに向けさせようとした。
矢の力によってシヴァは一瞬気を乱された。
一瞬成功したかのように見えたが、苦行を邪魔されたシヴァは激怒。
第三の目を開き、そこから放たれた灼熱の光によってカーマの肉体は滅ぼされてしまったのであった。
だが、このおかげでシヴァとパールヴァティは結ばれ、スカンダが誕生してターラカを打倒したのであった。
一方、カーマの妻ラティは嘆き悲しんだが、天の声から
「シヴァがパールヴァティ―を受け入れた時、シヴァはカーマに肉体を返すだろう」
と予言された。
生まれ変わったカーマ
シヴァによって殺されてしまったカーマと妻ラティは予言通り再開します。
その話が「バーガヴァタ・プラーナ」に存在しています。
~妻との再会~
カーマはクリシュナとルクミニーの子供プラデュムナとして生まれ変わった。
だが、シャンバラという悪魔が
「プラデュムナがシャンバラを殺害する」
という予言を阻止するため、赤子のプラデュムナを誘拐して海に捨てた。
赤子は魚に喰われてしまったが、漁師がその魚を釣り上げてシャンバラに献上。
その魚の腹を裂くと、なんとプラデュムナは生きていたが、シャンバラは一切気が付かなかった。
給仕の女性マーヤーヴァティーの元で育てられたが、実は彼女は生まれ変わったラティであった。
予言通りに二人は再会を果たし、大きくなったプラデュムナはシャンバラを殺害。
マーヤーヴァティーと共にクリシュナの元に凱旋したのであった。
FGOのカーマと神様関係
やさぐれ真面目不憫系サーヴァント
FGOに登場するカーマはまさにインド神話のカーマが元となって誕生したキャラ。
初登場は幼女の姿をしており、「愛の神」・・・・っぽくない言動をとります。
このカーマが召喚されたのは少なくとも「シヴァに殺害された後」です。
その為、神様?関係は最悪。
破壊神シヴァ | シヴァとパールヴァティの愛の為に遣わされ、そのせいで焼き殺された。 まさに自分を殺害した神様であり、愛に対するトラウマを植え付けられてきた張本神。 憎悪の対象であり、どの段階でも恨みの対象としている。 このゲームで恨みが無くなることはあるのだろうか・・・。 |
雷神インドラ | カーマの力をシヴァに使うように頼み込んだ神様。 ある意味で元凶なので、カーマは恨んでいる。 |
パールヴァティ― | カーマの力をシヴァに使うように頼み込んだという説もある。 その為か嫌われている。 とはいえ、シヴァ程は嫌われているわけではないそうで、遠回しに嫌がらせをする程度とのこと。 |
ラティ | 自分の妻であったが、召喚されたカーマにとっては「知識」としての存在。 実感がないのでどんな感情を抱いていたのかも思い出せないという。 ちょっと悲しい。 |
プラデュムナ | カーマの転生先のクリシュナの子供。 だが、この場合も「知識」としては知っているのみ。 「アナンガ(身体無き者)」が今の自身の姿と定義されているとして、無関係と否定している。 |
カーマがいなくてもシヴァとパールヴァティ―は結ばれていた
いくつかのサイトでも記されていますが、
実はカーマが手助けをしなくてもシヴァとパールヴァティ―は結ばれていた
といわれています。
神の後押しを受けてパールヴァティ―がシヴァの気を引こうとしたが、いくら待っても振り向かれなかった。
考えを改めて、パールヴァティ―もあらゆる苦行を行った。
すると、姿を変えたシヴァがパールヴァティーに自分の悪口をわざと言いまくった。
パールヴァティ―が怒って反論したところで、シヴァが正体を現した。
パールヴァティ―の自分への愛が本物と知ったシヴァは妻として迎え入れた。
という話がカーマさんの死後に続きます。
カーマの弓矢で一瞬気を乱し、パールヴァティ―の存在を知ったという見方もできます。
しかし、恐らくカーマの力を使わなくても、シヴァはパールヴァティ―の存在に気が付いたでしょう。
FGOのカーマさんがここまで捻くれたのも納得できる物語です。
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